3.本体工事
6/09
中古の耐火煉瓦で石窯の基盤を作った。この上に耐火煉瓦で窯を作り、外周りを赤煉瓦で巻く二重構造になる。石窯ならSK(ゼーゲルコーンの略で数値が高いほど耐火度も高くなる)28〜30で充分なのだが、近所のホームセンターにあった数字を打ってない(輸入品?)耐火煉瓦はちょっと心配なのでやめた。陶芸材料店では煉瓦もモルタルもSK32以上しか扱っていない(数値が上がるほど値段も上がる)。配達日の都合で、届くのは明日か明後日になりそうだ。
6/10
石窯の床部分に取りかかった。基盤に中古煉瓦を使ったのでレベルが出しにくく、思いの外手間取ってしまう。まだ半分しか終わっていない。基盤の上に安定させるためとレベルを出すために耐火モルタルを使うが、焼き床は一枚板のようにしたいので、目地を入れずに隙間なく繋いだ。そのため将来もし煉瓦が変形して床が凸凹になっても、床の煉瓦だけ交換できるように、壁の基礎部分とは独立させている。
6/14
結局前回並べた耐火煉瓦は全部剥がして最初からやり直した。レベルを出すために耐火モルタルを5〜6ミリの厚みで塗っていたからだ。ついつい陶芸窯の感覚で考えてしまっている。石窯は煤切れすれば良いわけだから、だいたい5〜600℃程度、上がっても700℃までいかないだろう。素焼きでも800℃だから、600℃ぐらいだと粘土でも固まらない。ましてSK34の耐火モルタルは固化しないだろう。安定させるための耐火モルタルを最小限の薄さにして、レベルを出すため厚みがいるときは煉瓦の欠片を敷いて調節した。前回にもまして手間取ったが何とか床部分が終わった。
壁の部分を2枚ずつ積んだがここは半枚手前をあけて積まなければいけなかった。またやり直しだ。4枚だけだから・・がんばって積まなくて良かった。
6/16
石窯内部の壁の部分が終わった。この上にアーチを架けるのだが、周りを赤煉瓦で縛ってからでないと、耐火煉瓦だけではアーチを支えきれない。
その前にこの壁の内側に窯口のアーチを作らなければいけない。それこそがこの工事最大の難関になる。窯口の両側に片側二段ずつあの金具を埋め込むのだ。可能な限り垂直に。プレッシャーだ。
6/17
プレッシャーだが避けては通れない。ベストを尽くすだけだ。、下げ振りを使ってみたが微妙な傾きを調節するには何を挟めば良いのか。考えた末、セメントを薄く溶いてペインティングナイフで掬い、煉瓦に濡らすように吸わせてみた。これは上手くいったと思う。といっても手作業でできるのはこの程度、結局は目見当だ。
調節後しっかり固定させるために、キャスター(キャスタブル耐火物)を考えていたが、温度が低すぎても強度が確保できるのかよく分からない。セメントで充分かとも思ったが、キャスターにセメントを混ぜることにした。以前、窯の補修を頼んだとき、窯職人が耐火モルタルとセメントを混ぜていたのを思い出したのだ。耐火モルタルとセメントはあまり意味がないと思うが、低温の場合、キャスターとセメントは案外いいんじゃないだろうか。
天気がもってくれたおかげで何とか4個とも埋め込むことができたし、ベストは尽くした。後は採点を待つだけだ。せっかくの金具を台無しにしていなければ(画像が言い訳になっていなければ)いいのだが。
6/18
耐火煉瓦の高さまで赤煉瓦を巻いていくだけ、しばらくは単純な作業が続く。レベルもほとんど気にする必要はない。赤煉瓦の目地は10ミリぐらい、耐火煉瓦は普通5ミリぐらいで両方の煉瓦の高さがそろっていくのだが、今回、耐火煉瓦の目地を1ミリ程度にしているので、赤煉瓦の方が徐々に高くなっていく。
土台と違って、本体部分だから赤煉瓦の汚れを拭き取って、目地ゴテで目地を入れる。この辺がちょっと面倒だ。
7/01
昨日は窯焚きの振り替え休日だったが、今日来てみたら、お隣さん(義弟)にお願いしている窯の屋根の基礎が片側分出来上がっていた。
明日からまた雨らしいので今日はちょっと頑張った。これで天気次第ではいよいよ耐火煉瓦のアーチを組むことができる。ここもちょっと難工事になるだろう。窯口の小さなアーチが窯のアーチにぴったりはまってくれるかどうか、一応計算上ではできているのだが・・・。
7/02
窯口のアーチを架けた。この部分は中古のアーチ用耐火煉瓦(Y2-SK32)を使った。かなり汚れていたので、作品と一緒に素焼きしたら見違えるほどきれいになった。アーチ用だと上辺に隙間ができないので、この上にアーチが架けやすいのだ。まず型枠の上に並べて微調整する。調整できたら、内側は耐火モルタル、外側は普通のモルタルで固定し、型枠を外して完成。
この上に窯本体のアーチがきちんと重なるかどうか並べてみたが、何とか計算通りにできているようだ。今日のところは置いてみただけでここはまだ固定していない。
背後の壁が少し空いているのは最後に型枠を抜き取る為のスペースだ。ここも塞いでおいて型枠を窯の中で燃やしてしまうというテもある。実際そう書いている本もあった。だがいくら素人でもそんな素人仕事はしたくない。
入れ子構造のアーチは計算通りできているようだ。上のアーチがこのまま後ろに繋がって窯本体になる。
7/06
昨日グッチさんのご主人が鉄扉の寸法を取りに来られた。金具の取り付けは何とか合格点をもらえたようだ。ほっとした。
天井のアーチは1列ずつ組むと将来緩んで前後に開く可能性がある。交互にずらして組むことにした。(これは型枠を燃やさない方針と関係している。)そのために作り始めたら途中でやめずに、一気に仕上げる方が仕事がやりやすい。小僧さんが手子をして手伝ってくれたので、思ったよりずいぶんはかどった。窯に登っての作業だから、一人だと煉瓦一つ取るにもいちいち上り下りしなければいけない。目地は強度を考えてキャスターを使った。煙突と熱電対(温度計)用の穴も無事にできて、アーチが完成した。予定より早くできたので、型枠を取り出した後、背後の壁を塞ぐところまで着手できた。もう少しだがこの後が難しい。
煙突の取り付け部分と窯の内部。背後の壁はアーチに煉瓦を合わせるのが難しいし面倒だ。
(熱電対の代わりに塩ビ管を入れている)
7/07
今日の工事はほとんど進展がない。だが一番手間取って面倒くさい工事だった。型枠を抜き取るために開けていた背後の壁を塞いだ。昨日二段分積んでいたから今日は残りのほんのちょっとだ。だが下と同じ並べ方で積んでいくと、最後は厚みが20ミリだけ、とても中途半端に残ってしまう。これを解消するには煉瓦を縦置きにすると(面倒でも仕事は楽になるから)いいのだが、でも目地の繋がりに連続性が無くなって見栄えが悪い。結局、長さ229ミリ、幅114ミリ、厚さ63ミリの耐火煉瓦をタガネで厚さ20ミリに割り(『ばらばらに壊れるだろう、無理だ』と思ったが、スキルアップしていた?)、両端をアーチに合わせて削り出した。これで石窯の内部工事は終わった。積めずに残していた裏側の赤煉瓦も表と同じ高さまで積むことができた。
パンを焼くとき真正面に見える壁なので気になる部分を残したくなかった。
7/08
先に煙突に取りかかった。煙突が決まらないと屋根が付けられないから。下部30センチぐらいまでは内側を耐火煉瓦、外側を赤煉瓦で巻くという窯と同じ構造にした。
ダンパーの差し入れ部分を広く取って、馬鹿穴を作った。煙突の引きが悪いとき、ここから追焚きをして引かせてやるためだ。薪で焚く陶芸窯では常識だが、石窯では(私の集めた資料の範囲では)見たことがない。おそらく必要ないのだろう。でも念のために作っておいた。
これから上は赤煉瓦だけで積んでいく。あと10段ぐらいを予定しているが、現場の状況で決めることにする。煙突が屋根の下に収まったら笑えない。
右が馬鹿穴兼ダンパー。煙突が引き始めたら煉瓦でふたをする。下2段目途中までアーチで隠れる予定。
7/09
煙突が完成した。最初に読んだ資料(石窯作りの本)では、煙突は手前に付けると書いてあった。そこが陶芸窯との違いなのだ、と。でもいくら考えても納得できなかったので、敢えて後ろに付けた。結論はもうすぐ出るだろう。
内寸は10センチ角だが、外寸は一辺35センチになる。窯に比較して見かけがちょっと大きいが、これ以上小さくできなかった。高さは赤煉瓦15段で105センチ。これくらいでいいと思う。あとは天井のアーチ部分を赤煉瓦で巻いたら石窯の完成だ。まだまだ手間は掛かるが、技術的に難しい箇所はもう残っていない。
7/12
基礎工事から数えて今日でちょうど2ヶ月になる。あと1日か2日で完成するだろう。ここまで来ると気持ちはもう窯焚きの方に行っている。早く終わらせて早く焚いてみたい。
7/13
午前中、小僧さんの釣りたてヒラメの刺身でやむなく中断。午後、完成目前の通り雨でやむなく中断。天気が良ければ明日完成する。アーチの最後尾2列と正面のテーブルを残すのみだ。
7/14
ついに完成した。14日・石窯の日に間に合った。
一人で乾杯していたら、お隣さん(義弟)がやって来て「できたね。じゃあ組もうか。」で、あっという間に小屋の棟が上がった。材料はすべてリサイクル、廃材(薪窯の燃料として解体屋さんから貰った物)を使って作ってくれた。面倒くさい仕事だったに違いない。しかも釘を一本も使わず、木組みだけでできている。(宮大工か)
一応石窯の工事は終わったが、鉄扉が付いて本当の完成になる。明日は煉瓦の湿気とデータを取るために空焚きしてみようと思う。燃料はこの間伐ったヤマモモ、まだ生木だが何とか燃えてくれるだろう。